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雨の発足 [移住生活のはじまり]

サァーという雨音で目が覚めた。
風もない中、雨がまっすぐに降っている。
窓から見える山並に、もんやりと霞がかかっており、奥へ、さらにその奥の山へと
霞のグラデーションで幽玄な風景が広がっていた。
しかもうっすらと朝焼けのピンクが映っている雨空が、愛らしさすら感じる。
毎日見ているのに、特に劇的な風景でもないのに、
毎日新しい顔を見せるこの土地は、本当に見飽きることがない。

1時間ほど遅く起きてきたダーリンに朝の空を報告しながら、
また二人で風景をずっと見る。
刻々と変わっていく、雲、なのか霞、なのか。
普段気が付かなかった谷がそこにあることを見せてくれる。
夕立のようにザーッと降ったかと思うと小止みになり、
また遠くから雨粒が森の葉を叩いて、雨が近づいてくる音がする。
谷から立ち上っている蒸気なのか、はたまた雲から谷へ下っていく霧雨なのか。
山並に縦に横にと「水」が姿を変えて現れては消えてゆくのを、
ただただ二人でずっと見る。

「こんな生活をずっと望んでいたのかもしれないな」とダーリン。
そうだね。不便もいっぱいしているけど、ちっともおうちも片付かないけど、
すごくすごく豊かな生活だね。


あ、また雨の音が近づいてきた。
今日は波のように何度も何度も雨がやってくるのを聴く一日になるのかな。


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顔が浮かぶシアワセ [移住生活のはじまり]

帰宅して間もなく、
2週間ほど前に引越挨拶で顔を繋いだばかりの顔役さんの奥様が、
「採れたもののお裾分け」と、大量の夏野菜を持ってきてくれた。
ありがたい! ありがたいけど、今年のウチは何も作っていない。
お返しできるものがなくて、恐縮すぎるよぉ!

一息ついたところでまだ引越挨拶が済んでいないご近所に挨拶まわりに出る。
ご近所は殆どが農家さんなので、窓が開いていても外仕事をしていてご不在なことが多く、
引越から3週間を過ぎても半分しか会えていなかったのだ。
今日も漁師さんの家はご不在だったが、他は無事まわりきることができた。
その中に一人暮らしのおばあちゃんが居らしたが、
ご挨拶が終わって帰ろうとした時、はっと気が付いたように、
「ササギ、持って行きなさい、ササギ」と庭に出て、ポチポチとインゲンをもぎ出した。
「ありがたいですけど、もう充分です、食べきれません」と恐縮する私たちを尻目に、
手早くポチポチと袋いっぱいに収穫して持たせてくれた。
あああ! またしても、ありがたいけど恐縮すぎるぅぅぅ!!


ダーリンが買ってきた魚を下ごしらえし、私も買ってきた青森の梅の下ごしらえをする。
7月下旬にまた梅仕事ができるとは思わなかったけど、
本当に今年はこれが最後の梅仕事だろうなぁ。
梅シロップにでもして、お礼にお返しできたらいいなぁ。
そうだ、いただいたナスを南蛮漬けにして、ささやかなお返しにしようか・・・。
そんなこんなを考えたり話したりしながら、二人で晩御飯を作った。

塩サバ焼き、
インゲンのごまみそ和え、
トマトとキュウリと鶏の中華和え、
鶏だしの卵スープ、
ナスの南蛮漬け。

ああ、どれも美味しい。
何より、口に入れる度に、この野菜を、この卵を、作ってくれた人の顔が浮かぶ。
なんてなんて、ありがたくって、愛おしくって、豊かなことだろうか。
この土地が、この土地に住む人が、
遠い場所でもなく、遠い未来でもなく
すでに豊かさが今、私たちを取り巻いて溢れかえっていることに気づかせてくれる。
シアワセって、こういうことだったのか。すごいなぁ。


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想いのこもったごはん [滋味ごはん]

ダーリンの平日休み。
免許書き換えのため二人で朝から札幌に向かう。久々の私の運転。
ダーリンが用を足す2時間ほどの間、私も石狩市役所で用事を足すことにした。
石狩の市街地は土地勘がないので、免許試験場に戻ろうにも方向がわからなくなって混乱。
なんとか用事の済んだダーリンをピックアップしたが、
土地勘の無い場所の運転にストレスを感じ、結局ダーリンに運転を替わってもらった。

運転交代時に向かいにあった飲食店が気になり、そこでランチにすることにした。
ちょっと年季の入ったお店だが、昭和の古いオーディオセットや
特殊な大テーブルが据えられていたりする様子に、このお店の静かなこだわりを感じる。

「おまかせ定食のみですがいいですか」
おお! なんだかメニューを選ぶ気分じゃなかったので望むところです!

冷やしたサバ味噌煮を含む小鉢5品! しかもワラビあり! 
自分で山菜を採ってる大将なのかなぁ、とテンションが上がる。
「今日は暑いから冷たい汁にしました」と涼やかなそうめん汁!
ああ、どの小鉢も美味しい。
ごはんもちゃんと美味しい。
定食でごはんがおいしくないとガッカリするんだよな。
美味しいごはんが、単純に嬉しい。

「この他にメインが来ます」
え! もうこのラインナップでおなか一杯になれますけど!?
付け合せ野菜2品がついた豚肉の炒め物が来た。
炒め合わせた野菜は何だろう? 菜の花みたいな、アスパラ菜みたいな?

ママが「自家製の無農薬野菜です」と説明してくれた。
中国野菜のカイランというものらしい。
小鉢の野菜たちもほぼ自家製とか。

いやはや、予想もせず全部が美味しかった! 
しかも自家製野菜で料理を提供したい私にとっては素晴らしき先達!
感激しきりな中、食後のコーヒーまであって、なんと800円! 最高すぎた。


「同じ市内だったら通っちゃうね」と話しながら帰路に就く。
ああ、他のお客さんが居なかったら、ワラビのこととか、もっと色々話を聞きたかったな。
何ていえばいいのかな。ただ美味しいだけじゃない、
『想いのこもったごはん』を食べさせていただいたなぁ、という喜びに
おなかも胸もいっぱいになったのだった。


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休日の庭仕事 [移住生活のはじまり]

ここんとこ天気が良くて、厚田もなかなか暑い。
あらゆる虫が活発に動き回っているこの場所では網戸が必須なのだが、
急ごしらえの貼り付けた網戸で凌いでいるので開けられる窓が限られている。
山や川がすぐ近くなので湿気も多くて、風は通っているものの、その風も蒸している。
8月の夏本番には、いったいどれくらい暑くなるのだろうか。


いつも往復100キロ運転しているダーリン。
たまには運転を休む日をつくろうよ。

と思ったが・・・家に居ても働いちゃうのがダーリンなのだ。
いつものらりくらりと草刈りをしている私と違って、
ブルドーザーが進むが如く、すごい勢いで庭の草刈りをしている。
何本かある木の周りが藪と化しているのだが、木の根元をすっかり払ってくれた。
ものすごく広がっていた木(オンコ?)の下枝を手鋸で払って、
すっきりした姿に変身させた。本当はこんな姿だったんだね。
足元で暴れていたドクダミなどの下草もバッサリ刈ると、
木も心地よさそうに見える。
ひとしきり草刈りを終えて作業服を脱いだら、
「Tシャツのままプール入った?」ってくらい汗だくになっていた。

いったんシャワーを浴びて休憩したら、今度は私も参戦して、
植え込みの横に広がる荒地に何か花の種を播こうということになった。

が、手強い。土の質が悪すぎる・・・。
ガッチガチの乾燥した粘土質の土で、しかも大小の砕石が混じっている。
荒地に最初に生えてくるような乾燥に強い硬い草たちだけで藪化している状態。
敷地の縁をぐるりと10センチ幅の帯状に起こしたいのだが、
剣先スコップの刃が入らない。
砕石がジャマしているのか、地下に潜んだ宿根草の根なのか、
はたまた粘土がここまで固まったのか・・・
ダーリンの鍬は何度も弾かれ、刃が柄からすっぽ抜けること数度。
私も剣先スコップを諦め、手鎌でコリコリと引っ掻きながら
石を掘りだし根を切って、数センチずつ起こしていく。
道路に面したせいぜい10mくらいを一列起こして種播きするだけで小一時間かかった。
焼け石に水、とは思うが、ピートモスともみがら燻炭を少し混ぜて、
ほんのちょっとでも水持ち・水はけが改善して芽を出してくれたらなぁ、と願う。
やりきった感はなく、なんかこんな土地に降ろされた種が
可哀想な気がしてきて、疲労感と筋肉痛だけが残った。


何を挫けているんだ!
最初からうまくいくなんて期待してなかったじゃないか。
今日の土起こしのように、ちょっとずつ、ちょっとずつ進むのだ。
一日単位でなく、週単位、月単位、もしかしたら年単位で
ごほうびはゆっくりやってくるはずだ。・・・よね?

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屋根補修の新たな方策 [移住生活のはじまり]

よく声をかけてくれる山のプロさんが、
「屋根の話、どうなった?」と言って訪れた。
どう転んでも予算がひねり出せないこと、
屋根の葺き替えのような大規模修理ではなく
この冬を越せるだけの応急処置でよいから
内部から裏打ちできないかを考えている、と伝えた。
「もう一人、安く相談にのってくれそうな人が居るから声をかけておいたよ」とのこと。
建築・修理だけでなく、鹿猟もされている方だそうな。
山のプロさんもそうだが、この土地の人たちは本業が何かわからんほど、
何から何まで自分たちでできる人ばかりで、本当に驚きだ。
とりあえず明日、見に来てくれることになった。

さて、ずっと吊るしっ放しにしていたドクダミを処理しよう。
茎から葉を刈ると、同じように干していたのに、
青いまま乾燥した葉と、茶色く枯れている葉とがある。
できるだけ青い葉を選んで、保存瓶にポイポイと詰め込んでいく。
瓶の口までしっかり詰め込んだら、35度以上のスピリッツを注いで、
あとは時々揺すりながらエキスが出るまで待つだけだ。
虫よけや虫刺されに効くドクダミチンキができるらしいので楽しみだ。
同じ作り方でドクダミの花も小さな瓶に詰めて、
これは独特の香り高い化粧水ができるらしい。

今年は何の作物も植えられなかったので、
何かを手作りするだけでもワクワクだなぁ。
ここへ引っ越してから、何をしようにも
その前に片づけなきゃならないことが次から次へと出てきて、
ひとつとして完成に至らないことばかりなので、
ここまでやれば完成する、という項目があるのは、救われるなぁ・・・。


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草刈りで気付く距離感 [移住生活のはじまり]

謎の庭木。
這松のようでもあり、オンコ(イチイ)に見えなくもない、常緑樹。
とにかく長年手入れをしていないので、もともとの樹形がわからないほど暴れている。
根元にも様々な草たちが複雑に生い茂って、何がどこから生えているのか・・・。

庭の状態を把握するために今日も草刈だ。
あんなにドクダミを刈ったのに、まだまだ何倍も、何か所も、
あちこちに生えまくっている。


とりあえず、訳も分からず刈り始める。
這松のようなオンコっぽい木は、まるで花が開いたように低く周囲に広がって、
その下の陽があたらないところから、
一生懸命這い出してきたように、徒長したドクダミが花のガク状に下部を取り巻く。
ちょうど花芯に当たる部分に茅と思われる背の高い草がすっくと立っている。
こうしてみると、みんなで寄り添って、まるで花を形作るように
支え合っているみたいに見える。
自然農でも、大地の再生実践マニュアルでも、
「足りないものを補うように、必要があってそこにある」的な話が出てくる。
ここにいる植物たちは、何を補おうとしているのだろう。
色々調べたいがネットがないので、
荷物を漁って、「北海道の花」というポケット図鑑で調べてみる。

敷地に黄色い花が咲き乱れている。ほぼこの花が埋め尽くしていると言っていい。
タンポポみたいなものかと思ったら、ブタナだった。
菜園だと、オヒシバ、メヒシバ、クローバー、スベリヒユなどで土が覆われていたが、
この敷地は粘土質の土がむき出しになって、そこから単独で生えている。
水はけが悪くて、しかも表面が乾燥しているこの土地を補おうとしているのかな。

よくわからないけど、木の足元は風通しが良くなるよう梳いてやろう。
徒長した枝も切ってやろう。
むき出しの地面から少しでも色々な植物が生えやすくなるように、
刈った草も細かくして撒いてやろう。


夢中で草刈りをしていたら、何か気配を感じた。
石板の上に、「あいつ(カマドウマ)」が居た。
アンタッチャブルゾーンから来襲する時と違って、こちらにフォーカスしていない。
私とは違う方向を向いて、じっとしている。
おうちの中であいつを見ると、私も恐怖オーラを出してしまうのだが、
外の風でくつろいでいるように見えるあいつには恐怖を感じなかった。

視界の端にあいつを意識しつつも、黙々と草刈りをする。
あいつも、おそらく私を意識しつつも、気にせず違う方向をみてじっとしている。
ふうん。こんな距離感もあるんだな。
あいつ、外ではこんな顔してたのか。
おうちの中では私の恐怖感を反映して、エクソシストしちゃってるのかな。


植物とも、虫とも、うまい距離感でいられたらいいなぁ。
なんか、ちょっとヒントを貰ったような気がする。

とはいえ、夜はやっぱりあいつが来襲して、
ひとりで大騒ぎしたのだったが。
わかったような気がする、と できる、は別物だった。

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アンタッチャブルゾーンがもうひとつ [移住生活のはじまり]

ダーリンの仕事前に二人で草刈り。
私は色々観察しながらネチネチと呑気な草刈りだが、
反対側の桜の下を刈っていたダーリン、同じノコギリ鎌を使っているとは思えない
すごい勢いでキレイにしていく。
うわぁ、鬱蒼としていた桜の木の下がスッキリ。すごい、すごい。
ドクダミの強い臭いが漂うものの、風が通るようになって、桜も気持ち良さそう。

先日ご挨拶した顔役さんが、通りかかって声をかけてくれた。
屋根のことなど、どうしたらいいものかと雑談程度に軽く相談してみた。
「う~ん、葺き替えとなると、それぐらいの金額になるよなぁ。
例えば、あの折れた垂木を支えるものを外側から突っ込むようにするとか、
他の方法はあるかもしれんなぁ」
「足場を組まなきゃならないので、その費用も嵩むらしくて」
「ユニック使えばなんとかならんかな。ま、他の業者にも相談してみるといいよ」
そうだ、ネット工事不可についても聴いてみよう。
「電柱が低いからと言って工事不可だったんですよ、これが生命線なのに」
「電柱なぁ。北電はなかなか動かんから、時間がかかるかもしれんなぁ。
この先に木が覆い被さった電柱があるんだが、何度言っても一向に動く気配がないんだ」
そっかぁ。時間がかかるかもしれないのかぁ・・・。

雑談中に、一番奥に住んでいるという方も通りかかった。
顔役さんに、移住者であることを紹介していただき、ご挨拶できた。
こんな風に、誰かと顔見知りになると、次の誰かと繋がっていくんだね。
そろそろお昼ごはんだ、とゴキゲンでおうちに入る。

長靴を脱ぐと・・・足の裏に何かついている。
うわぁぁぁ!あいつだ! 長靴の中に居たのか? 私、あいつを踏み潰したのか!?
楽しくごはんを食べようと思ったが、気持ちがダダ下がりだ。


ダーリンを送り出し、今度は家の中の掃除。
合板の壁を拭き掃除しながら、煙突の裏側に回り込むと、
煙突下部に鉄の小さな扉がついていた。ああ、灰を掻きだす扉だ。
昭和の学校にはこんなものも付いていたなぁ、と懐かしく思い出す。
中を掃除しましょ、と扉を開けると、わっさりした埃と、なんか羽毛のようなものが。
白い丸いものも見える。
ええっ? 卵? 空家の間に煙突に作った巣が落ちたのか?
なんか一人で対処するのが怖くて、扉をそっ閉じする。
私、虫も怖いが、鳥も怖いのだ。
・・・アンタッチャブルゾーンがもうひとつあった。

ダーリンが帰宅したら報告して対処方法を考えよう。


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ふたりで手作り側溝作業 [移住生活のはじまり]

北海道は雪が降るので屋根には雨どいが無い。
この屋根からの雨を受けているのが、おうちの周りにぐるっと敷き詰められた石板だ。
側溝は無く、この石板が平らに置いてあるだけなので、雨による土の凹みはないのだが、
石板が家側に傾いて敷いてある部分は、
家のコンクリート基礎側に水が溜まるのだ。
私としては、家の湿気はこれも原因のひとつではないかと踏んでいるので、
なんとか側溝を作りたいのだ!

先日の手作り土木で試した側溝は、ささやかながら効果があるように感じた。
粘土質の、黄土色の水溜まりだったのが、澄んだ透明の水溜りになった。
水は相変わらず溜まるのだが、引くのも早くなったような気が?
そんなこんなをダーリンに力説し、
今日はダーリンも一緒に側溝作りを手伝ってくれることになったのだ。


この手強い土にスコップを入れるのは、やはり男手があると助かるなぁ。
小石代わりにするため石板を砕く。
石板の上に石板を落として、それなりのサイズの小石にするのは案外簡単だった。
炭と小石と大きめの枝を側溝の下部に敷いて、
あとは小枝を、互いを絡ませるように、下流側に向かって挿していく。
前回試したので幾分要領も良くなり、
掘り終えたダーリンが小枝や草を手元まで運んでくれるので、サクサク進む。
草を絡ませた後は、仕上げにまた燻炭を撒き、
溝の縁に掘った際に出てきた小石で小さな土手モドキを作って完成だ。
今回は水がジャブジャブ溜まるポイントに、縦に深く掘る点穴を、大きめに作ってみた。


家の外周の四分の一程度だが、何かが完成する、というのは凄い達成感。
この荒れた敷地が、「庭」と言えるように少しずつ整えていこう。
今は荒地の植物しかいないけど、庭木たちも暴れまくっているけど、
たくさんの種類の植物がいきいきと繁っている、心地よい庭をイメージしながら。


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