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大雨のサンルームで [移住生活のはじまり]

すごい雨が降った。
夕立が長時間続くような、勢いのある雨。
私達が移住したのは、海沿いの厚田市街地ではなく、
月形へ向かう道道を数キロ山へ入った、発足(はったり)という山あいの地区。
海沿いと違って風が穏やか。
こんなすごい雨も、雲から水分が溢れるかのように、まっすぐ降ってくる。
窓にも殆ど水滴が付かないほどまっすぐ、
空と地面が氷柱で繋がっているかのように太くまっすぐに。

屋根を叩く雨音がびっくりするほど大きく家じゅうに響く。
おうち側から水路へと、アスファルト面を川のように水が流れていく。
キレイだ。
雨はこんなキレイな形で空から降ってくるんだなぁ。
まだ明るさが残る時間から、すっかり暗くなるまで、飽きることなくずっと見ていた。


ふとサンルームの窓を見ると、小さなカエルがガラスに貼り付いている。
アオガエルかなぁ。腹側から見るのは初めてだなぁ。
小さな指先に、さらに小さな吸盤がついていて、様子を見るようにゆっくりと
片足ずつ貼り付けながらガラスを上っていく。
お腹は白くて、ぷっくりしている。
開運マスコットとして財布に入れておきたいくらい、小さくて可愛い。

あらあら、見回すと他にもカエルが上ってきている。
大雨から避難しているのかな。
おうちのなかでゆっくりしながら、こんな観察もできるんだなぁ。


フタをしてからというもの、『アンタッチャブルゾーン』からのあいつの出現は減ったが、
明らかにプラ段に突進するポンッ、という空気を含んだような衝突音は
ずっとしている。
やっぱり『アンタッチャブルゾーン』があいつの目抜き通りだったのかと確信しつつ、
あいつとの遭遇が未だ無いサンルームは
夜の癒しの空間だ。
もう少し、雨とカエルを見ていようかな。


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工事も造作も無理なら、工作で。 [移住生活のはじまり]

あいつの来襲で頭がいっぱいの夜を毎晩過ごすのは耐えられない、と
ダーリンに訴え、キッチン裏を仮に密閉したいと提案。
本当なら工事業者にお願いしたいが、プロに頼む予算はない。
DIYをするにも道具と材料を揃えてからとなると時間がかかりすぎる。
仮でいいの、とにかくあいつが湧き出てくるのを少しでも抑えたいの!
仕事前ながら、切羽詰まった私の要望に応えて、札幌のホームセンターに向かう。

このおうちの天井に元々プラ段が貼ってあって、
先日流し台掃除の時にピンと来て壁の穴を塞ぐのに流用した。
プラ段なら工作感覚でなんとかできるだろう。
プラ段と養生テープを買って厚田に戻る。
もうダーリンの出発時間だ。ごめん、仕事の日にまで負担をかけて。


ダーリンを朝ごはん抜きのまま慌ただしく送り出して、さあ、作業だ。
そっと流し台・ガス台・調理台を移動。
露わになる『アンタッチャブルゾーン』。
あいつは断熱材のところにちょこんと居た。
そ~っとプラ段を当てて、サイズを測る。あいつも様子を見ているのか、動かずに居る。
測ったサイズに2枚、プラ段を切る。
よし、行くぞ。
そっと『アンタッチャブルゾーン』にプラ段を当て、
ガンタッカーでバンバンと止めていく。
もう1枚、これもバンバン止めていく。
とりあえずフタはできた。あとは隙間を養生テープで塞いでいく。
『アンタッチャブルゾーン』のフタが出来たら、今度は床下排水管もプラ段でフタをする。
流し台排水ホースはダーリンに取り付けてもらうので、それまではここも閉鎖だ。

くまなく貼り終え、再度流し台を設置。
今晩はどうなのだろう。怖い。
とにかく、日が暮れてあいつらが来襲する前に調理を済ませてしまおう・・・。
どうか、どうか、来襲しませんように。
夜が怖い私なのだった。


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「あいつ」来襲 [移住生活のはじまり]

冷蔵庫はキッチンの流し台と並んで設置することが多いだろう。
でも今、おうちではキッチンとリビングの間の真ん中に、ど~んと鎮座している。
流し台に並べて置ける位置にコンセントはあるものの、
流し台はただ並んでいるだけの仮置きなので、あとで動かす必要がある。
もうひとつの理由は、キッチンの裏の『アンタッチャブルゾーン』の対処を何もしておらず、
どうもそこから虫がやってくると思われるのだ。
虫の出入口となる場所に冷蔵庫を設置したくない!

やってくるのは、「あいつ」、便所コウロギの異名を持つ、カマドウマだ。
コウロギのようにジャンプできる脚を持ち、サカサカサカと歩み寄ってくる姿は、
エクソシストの背這いで走ってくるそれに似ており、
人間の様子を窺った上で、なお向かってくる様子はゴキブリを思わせる。
パッと見は黒いが、足に禍々しい縞模様があって、なんとも恐怖をそそるのだ。
(あいつに罪はなく、私が生理的にどうしてもイヤなタイプ。個人の感想です。)
なんたって、便所と名の付くものが食べ物を扱うキッチンに居るのが許せん。

そして、水道だけが工事終了し排水管フリーのこの状況で、
あいつは来襲した。

まずは、パチッと何かが当たる音がする。
あいつがジャンプして、壁やら床やらに当たる音なのだ。
本来、怖がりの私はこういう音にすぐビクつく。
すわ、ラップ音か!と。
でも、このおうちでは、ホラー系の怖さは全く感じない。
だって、この音は、あいつだとわかっているから。

パチッと音がして、恐る恐るその方向を見る。・・・やはり居る!
あいつもこちらの気配を窺っている。
私が逃げようとしたとしても、攻撃に出ようとしたとしても、あいつは向かってくる。
ぎゃ~~~、もうパニックだ。攻撃すると、ジャンプする!
おうちの中に私の悲鳴が響く。
殺したくはないが、恐怖で必要以上に攻撃してしまう。
あいつはあのコウロギのような長い脚が意外に華奢で、攻撃で脚がもげることが多い。
でも、向かってくるのだ。残りの脚を使って。
仕留めた、と思っても動くのだ。
瀕死のあいつに罪はない。
でも怖いのだ! 嫌なのだ! やめて、来ないで~!!

戦い終えて放心する間もなく、またパチッとかパサッとか音がする。
ぎゃ~~~!!
次々と、まるでシューティングゲームのように次々と、
キッチンの裏からワラワラと、5~6匹出てくるではないか!
数年前に使ったままにしていた殺虫スプレーが荷物の中にあった。
気がふれたようにスプレーしまくった。
あいつらはエアーに反応して飛びまくる。
もう阿鼻叫喚の殺戮現場だ。
動かなくなったあいつ、ヒクヒクと虫の息(実際虫なんだけど)のあいつ、
素早く動いて隠れたあいつ・・・。
部屋の中は殺虫剤の香料が濃く漂う。
この夜、来襲は数回続いた。

嫌だ、怖い。
キッチンに立ちたくない。
キッチンから一番遠い場所で、涙目のまま、ダーリンの帰宅を切望する夜だった。


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自宅でキャンプ飯 [移住生活のはじまり]

キッチンは使えないが、洗面台は普通に使える。
水は備蓄水があるので、調理に使う水には不自由しない。
キッチンカウンターを設置できる状況にはないため食器の荷解きはできないが、、
最後まで札幌のおうちで使っていた最小限のセットがすぐ出せるので、
一回分の食事に使う食器は事足りる。
ガスはまだ手配していないが、カセットコンロがあるので調理もできる。

でも、食器洗いを洗面所でするのは、なんかしっくり来ないなぁ。
そう思っていたら、ダーリンが屋外の散水用の蛇口を見つけ、
問題なく使えることを確認してくれた。
ああ、忘れてた。外にも蛇口があったことを。
管理人さんからもらったホースリールを取り付けるとシャワーで出せたりして嬉しい。
お日様の下、外でお茶碗を洗っていたら
「おうちに居ながらキャンプ飯みたいだなぁ」って楽しくなってきた。

入居後に即、普通の生活、というのが理想なんだろうけど、
これはこれで楽しいなぁ。
まだこのおうちのことも、おうちの周りのことも、全然わかっていない。
生活しながらすべてが探検みたいに思えるかも。
すこしずつ、知って行こう。
すこしずつ、作り上げていこう。
新たな「ぼくたちのおうち」を。


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水廻りの問題 [移住生活のはじまり]

開けて7/4。
二日前にボイラー交換は無事済んで、今日は水道管の工事。
いよいよ水が使えるようになるぞ!
午前中に厚田産業さんが現れる。
シンク・ガス台・調理台は表も裏もびっしり虫や油汚れが付いていたが、
セスキでがっちり掃除してキレイにした。
さすがホーロー流し台、汚れさえ取れればツルツルなのである。
扉の中は水がでるようになったらガッチリ磨こう。

ピカピカの新品混合栓に取り換えてもらい、無事、水が出るようになった。
流し台裏の『アンタッチャブルゾーン』について質問してみる。
配管裏の断熱材や配管カバーはネズミに喰われてボロボロだが、カバーは交換してくれた。
あとは自分たちで壁と断熱材の間を補修し、断熱材を入れ替えればいいという。
配管のサビについては、給湯側は銅管になっているので交換の必要はなく、
水道の鉄管部分も1mもないので、おそらく常時使っている状態であれば
そんなにサビは上がらないだろうから緊急で交換する必要もないとのこと。
良かった~。恐怖の30万円超の工事はとりあえず必要ない。
(・・・ボイラー業者さんが「大丈夫じゃないすか」と言ってたのは、
銅管だとわかって工事不要になったから不機嫌になったのかしら・・・)

ところが。
流し台を設置して排水ホースを設置しようとしたら、排水ホースが妙に短い。
床下を走る排水管は太いのだが、そこに流し台の排水ホースが届かず、宙に浮いた状態でジャージャー注がれるのだ。すでに排水管周りの床は腐ってブカブカしており、
この状態では恐ろしくて排水できない。
とほほ。水は出るけど、長い排水ホースを購入してからでないとキッチンは使えないなぁ。
でも、お風呂は入れるし、洗面台も使える。今日はこれで良しとしよう。

厚田産業さんが帰って、そうだ、洗濯ができるようになったんだ!と
喜び勇んでダーリンに洗濯機の給水ホースを取り付けてもらう。
ああ。ここでも問題。
蛇口からボタボタ水が漏れてくるぅ。
「蛇口のコマが古いのかな。仕事前に部品買っておくよ」と、時間切れでダーリン出勤。

厚田産業さんに相談したら、午後にまた来てくれた。
一度撤去した洗濯機も設置してくれ、無事洗濯ができるようになった!
ありがとう、ありがとう~!
これでまたひとつ、できることが増えた。
普通に水が使えるって、実は
すごく色々なことが整っているからできることなんだなぁ。


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初めての厚田の夜 [移住生活のはじまり]

厚田に着いて、玄関を開ける。「ただいま、厚田のおうち!」
するとダーリンが、「もう『厚田の』は要らないよ、ここが僕たちのおうち」
そうだったね、もう他におうちはなくなったんだった。

配達先を変更してから初めてのトドック配達があった。
配達担当者にご挨拶し、不在時の置き配場所など摺り合わせ。
リサイクルショップから冷蔵庫も届いた。
持参した冷蔵庫内の食品も、保冷された状態のまま、新たな場所に収まった。
しなければならないことは山ほどあるが、
火はカセットコンロが、水は備蓄水が、食品は冷蔵庫に、と
暮らすために最低限のものは準備できた。
あとは寝る場所を確保すれば、生活が始められる。

一番虫が少なくて、ハウスダストも少なそうな2階のフローリングの部屋、
通称『ぼくの部屋』を寝室と決めて、がっちり集中して掃除した。
二人でベッドマットや寝具をエッチラオッチラ2階に運び、
枠の組み立てはダーリンにお願い。
と、ここで問題発生。

「印鑑が入ってた小さな引出しはどこ?」
「あれと一緒にあったよ、積込の時にどこに入れたの?」
「入れた記憶がない・・・載らなくて一旦出して仮置きしたコンクリの所かな・・・」
「え・・・札幌に置いてきちゃったの?」
「わからない」
私も荷下ろしした際に見た覚えもない。てか、最後の朝にバタバタ突っ込んだ荷物は
荷造りというより放り込んだだけなので何がどこに入ったか記憶がない。
入れた可能性がある荷物を探してみたが、見つからない。
これがないと今後の生活に大きな支障を来たす貴重品だ。血の気が引く。
「今日は平日だし、管理人さんに見てもらおう!」
管理人事務所に電話したが、「おかけの番号は現在使われておりません」だと!
管理会社が変わった時に事務所の電話番号も変わったのか?

あとは緊急時にかけるための管理人さんの自宅の番号しかわからないが、もう
勤務している時間だし、ああ、どうしたらいいんだろう。
「とりあえず札幌に取りに行く」
え!? ええ!? ・・・でもそれしかないか。
「もしかしたら無意識にどこかの隙間に突っ込んでるかもしれないので、
私もゆっくり冷静に荷物を探しなおしてみる。何かわかったら電話するから」
居住中は管理人室に直接行けば事足りたので、電話番号は確認していなかった。迂闊!
ダーリンはとるものもとりあえず、札幌へと車を走らせて行ってしまった。

落ち着け、落ち着け。最後に見たのはいつだ。
突っ込んだにしても、少しは記憶がある筈だ。
自分のクセとして、こういうものは何と同類だと思って分別するだろう?
全然思い出せないが、とにかく最後の荷物をひとつずつチェックだ。
1時間以上あれこれやっているうちに、見つかった!
急いでダーリンに電話する。
「良かった、でもとりあえず戻って載せ切れなかったものを積んでくるよ」
ごめんね、ごめんね。ちゃんと管理できてないばかりに無理に一往復させちゃうなんて。

3時間ほど経ってダーリンが無事帰ってきた。
大変だったろうに、腹も立っただろうに、穏やかに。
管理人さんの携帯番号も聞いて、
もう管理人さんがさっさと撤去していた廊下のコンパネも回収してきてくれた。
ありがたくって、申し訳なくって、泣きそうになった。


戻ってきたダーリンはベッドを組み立ててくれた。
なんやかやとやっているうちにすっかり暗くなって、照明が付いていない部屋ばかりの
暗いおうちの中で、寝室だけがちゃんと部屋の体をなしていた。
たった1ヵ所だけでも落ち着く場所ができてホッとした。

寝具を整えていると、ダーリンが「あっちの部屋」と呼びに来る。
照明のない南側の部屋の窓から、見事な満月が見えた。
湿気を帯びた空に、ほんのり紗がかかったような満月が、山の端の上に光っていた。
あまりの美しさに、二人でしばらく見惚れていた。
本来なら2日前に厚田での夜を迎える筈だったけど、今晩だったからこそ見られた風景。
「厚田の初日がこの風景だなんて、札幌に余分に2泊したのは必然だったかもねぇ」と
ダーリンが言う。
そうだね。本当にそうだね。
厚田の風景は、わたしたちを確実に勇気づけてくれた。


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