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雷雨と霧 [厚田の風景]

ラジオからは頻繁に気象警報が流れてくる。
警報が出る地域も目まぐるしく変わり、雷雲がどんどん移動しているのがわかる。
ずっと暑かったから、空も早く雨を降らせたそうな顔をしている。
遠くの山から入道雲が湧いている。でもそれより低い所にも厚くて黒い雲が漂っている。
ああ、そろそろ来るなぁ、と思っていたら、
サンルームの屋根を叩くような大粒の雨。
でも、アスファルトに大きな水玉模様を作っただけですぐ止んでしまう。
どこからか雷鳴が轟く。まだ遠い。
でもお腹が空いた時のように長~くゴロゴロゴロと鳴り響く。
何度かバラバラと屋根を叩く音をさせて短い雨を繰り返した後、本降りになった。

激しい雨で厚田川の向こうにある山がどんどん見えなくなっていく。
景色がどんどん煙っていく。美しい。
音は大きいが、まっすぐ降る雨に、そのまま窓を開けたまま見入る。
しばらく眺めた後、台所に立って作業をしていると、ふいに明るさを感じた。
裏手の原野に降る雨が、陽に照らされて白く光っている。
雨に打たれている笹薮も、木の葉も、まぶしく光って、なんとキレイな天気雨!
大声でダーリンを呼んだ。
「うわー、きれいだねぇ」と驚いた後、「反対側に虹が出ているかもしれない」と
外に出て行った。
「虹、出てるよ~」
ダーリンに促されて外に出ると、すごく近い所に虹が出ていた。
田んぼの向こうの低くなったところに厚田川が流れているのだが、
田んぼの端の木と、対岸の木の間から虹が始まっているのがわかった。
そうか、川の上に水蒸気が上がってスクリーンになっているのか!
すごいなぁ、すごいなぁ。
虹の始まりも終わりもしっかり見えて、
本当に橋がかかっているかのようだ。
こんな虹、初めて見た。

そして夜。雨が上がってじっとりした空気が家の中も湿気らせる。
料理に塩を振ろうとしても、穴が詰まって出てこないよ。
ダーリンが、「霧で向こうが見えないよ、ちょっと外を見てくる」と言うので
一緒に外に出てみた。

何度も似たような風景はあったけれど、今日の霧はレベルが違う。
半月よりもちょっと太ったおぼろ月。ハロが出ている。夜の虹みたいに見える。
厚田川から向こうはこの世が無いみたいに、何も見えない。
近くにある筈の山が、まったく見えないのだ。
道道まで歩いてみたが、道路沿いにあるご近所さんの家の向こうも、何も見えない。
振り返ると、家の裏山すら煙っている。
ああ~。裏山の奥の山に、厚田川に合流する川があるけど、
その川からも霧が上がって、家の裏山の向こうはまったく見えない~。
すごいね~、と言いながら家に向かうほんの100mほどを歩くうちに、
裏山もどんどん見えなくなっていく・・・。
家に入ってサンルームから外を覗くと、田んぼも霧に覆われ、
家の前の道路にまで霧が迫ってきた。
「このままいくと、この世におうちだけしか無いみたいになっていくかも」

空には輝きがぼんやりと弱くなったおぼろ月がまだ見えている。
雨のあとの厚田の夜は、星も月も見えなくて真っ暗だが、
今夜は真っ白かもしれない・・・。

トワイライトゾーンみたいでちょっと怖いから、さっさと寝よう。
明日のいちご収穫の時までには少し霧が晴れてるといいなぁ。


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彷徨う犬 [移住地に馴染む足ががり]

ダーリンは裏の原野から運び出してきた細めの白樺を薪にすべく、
さらに物置に運びこんで電動ノコギリでカットする作業をしていた。
私は部屋でのんびりと、いちご収穫作業後の暑さを凌いでいた。

視界の端に白いものがゆっくり動いた。
見ると、真っ白い犬が集落の奥の方へ向かってトコトコ歩いていくではないか。
あれ?とサンルームから犬の行方を目で追うと、迷いもなく物置へ。

ええっ? 何?
慌てて物置の様子を見に行くと、ダーリンと一緒に物置から出てきた犬が、
今度は通りかかった駐在さんのパトカーに近寄っていく。
笑ったような顔した穏やかな犬、この子はもしかして・・・。

挨拶をしようとしたら駐在さん、「お宅の? 人懐っこい犬だね」
ダーリン、「いえ、もしかしてあのご近所の犬じゃないかと」
駐在さん、「知らせに行ってくるわ」
てなわけで、我が家の玄関先に誘導して水を飲ませようとしたが、
玄関から家に入ろうとする。
「いけない、いけない」とダーリンが優しく制する。
水じゃないのかなぁ、なんて話していると、トコトコまた集落の奥へ向かってしまった。

そこへ、件のご近所さんが車で登場。
「お隣の方に行っちゃいました~」と報告。
それからは300mほど先のお隣に向かった車を見守り、
戻ってきた車に併走して帰ってゆく、ゴキゲンな笑う犬を見送ったのであった。


「物置で作業してたら、背中越しにヘッ、ヘッ、ヘッて音がして。
ビクッとして振り向いたら、大きな犬だったんだけど、『オオカミっ!?』と思って
すごく怖かったよ~」とダーリン。
オオカミ、もう居ませんからっ。
でも、背中越しに動物の息遣いが聞こえるのって、怖かっただろうなぁ。

なんか、駐在さんの対応といい、ほっこりする出来事だった。
昨日といい、今日といい、彷徨っちゃってる続きだなぁ。


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彷徨う人 [移住地に馴染む足ががり]

夕方。いつもは地元の皆さんの軽トラばかり通る、おうちの前。
何か気配を感じて外に眼をやると、見慣れない人が家の前を徒歩で通り過ぎた。
ご近所さんなら作業着姿かTシャツ姿だが、
街を歩くようなシャツ姿の男性。
スマホを見ながら集落の奥に向かって歩いて行ったが、
ほどなくして引き返してきた。

どこへ行くんだろう? もう18時を過ぎている。
厚田の市街地へ行くにも地域バスの最終便がもうすぐだ。
いやまてよ、札幌へ帰ろうとしているなら、
札幌への路線バス自体も最終がそろそろじゃないのか?
陽が落ちるのも早くなっている。このままウロウロして日没を迎えたら、
真っ暗になっちゃう場所だって知っているのだろうか。
だんだん心配になってきた。
ダーリンに、「ねぇ、あの人困ってるんじゃない?」と相談する。
あ、道道に向かって歩いていたのに、また戻ってきている。

ちょっと声をかけてみようか。
困っているなら厚田まででも送ってあげればいいし。

車を出して、「こんにちは~」「何か困ってます?」と声をかけた。
「あ、いや、この近所に行くので大丈夫です、もう近くなんで」
近くったって、すでにこの地点から一番近い家(わたしたちのおうち)でも100mほど、
その隣は300m先ですけど?
遠慮するなら無理強いはすまい。おうちに戻ろう。


家に戻ってご飯にした。今日はダーリンがスープカレーを作ってくれたんだ~。
「誰か迎えに来るのかねぇ」なんて話しながらご飯を食べ、
食後にサンルームに行ったら、まださっきの時点辺りに居てスマホをみていた。
こっちを見たので慌てて隠れるように部屋に戻った。

その後、うちから見えない死角から迎えが来たのかはわからないが、
いつの間にか居なくなっていた。
誰かが迎えに来てくれたなら問題はないよね、大丈夫だよね?

心配しているうちに、ふと気が付いた。
あの彷徨う人からすると、地元の人にじろじろ見られて監視されている気分だったろうか。
おせっかいだったかなぁ。
でも、ほんの少し、地元の人の気持ちがわかる気もした。
明らかに地元民じゃない見知らぬ人、しかも困っているかもしれない人、
ほっておけないよね。


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当別へ買い出しに [移住地に馴染む足ががり]

そろそろ手元の現金が少なくなってきた。
厚田の市街地に出ても郵便局しかないし、ネット未開通のため
ネットバンキングで残高を見たり送金したりもできない。
一番近い銀行と言えば、当別に出るか、あいの里に出るかしかないか。
ああ、早くネット開通しないかなぁ。
つうけんさんが現地調査に来てから随分経つけど、何の連絡もない。
いちいちガソリン代がかかるのはキビシイなぁ・・・。

ダーリンも、「給料振り込まれてるかなぁ」と言うので、出かけることにした。
道道月形厚田線で当別に向かう。
途中、2キツネ、1リスに遭遇。
ダーリンが残高照会するも、銀行に入金なし。
私の口座から虎の子の預金残高をちょっとだけ下ろす。ふところが心細い。

そうはいっても、当別に来るのはちょっと楽しい。
なんというか、内陸の平地のせいか、
厚田より風景が穏やかと言うか。
なんかオシャレな所が多いし、つい「当別、都会やのぅ」と呟いてしまう。
お気に入りのふれあい倉庫で野菜を購入して、やっぱゴキゲンの私。
当別は亜麻の町でもあるらしい。入口に苗が並んでいた。
以前、苗穂の街路樹の根元に落ちていた種を拾って、苗を作ったこともあったけど、
創成川イーストのおうち前では苗はそれ以上大きくならず枯れてしまった。
発足のおうちの庭に、亜麻の可愛い青い花が咲き乱れたら、
どんなにキレイだろうか。
早く荒地の土壌改良をして、亜麻も育ててみたいなぁ。
とはいえ、創成川イーストの街路樹も建設用地みたいな土だった。
色々咲くようになるまで3年位かかったかもしれない。
焦らず、じっくり土づくりからだね。


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