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朧月夜 [父の介護]

老健の担当医師から現状と今後の看護方針の説明を受ける。
担当医師は従前から父が通っていたクリニックの医師でもある。
そしてなんと、父が法事や温泉に行けるかの可否を診断してくれた医師でもあった。
「ああ、あの時の! 父の気持ちを尊重してアドバイスいただき有難うございました!」
一気に親近感と信頼感が高まった。

父はもう嚥下自体ができないので、絶食対応になること。
服薬や水分補給も点滴で行うが、もう血管からは難しいので皮下からとなるが、
吸収にも限界があるため浮腫みが出てくる可能性が高いこと、など
基本的に入院中の看護方針を継承するものだった。
けれど、職員の許可さえ得れば長時間の面会も可能だし、
お楽しみ程度に、たとえばジュースなどを口に含ませて味わうことも可能とのこと。
面会できて、何かしてあげられることが出来るようになっただけで大進展だ。


久々にラジカセで音楽を流す。
父は童謡や抒情歌が好きでよく聴いていた。
小さい頃、夕暮れに父と散歩しながら『朧月夜』を一緒に歌ったことを思い出す。
でもどこを散歩していたのか風景はまったく思い出せない。
近所ではなく、なんとなく夕映えの野原のような・・・でもやっぱり思い出せない。
はっきり記憶にあるのは歩きながら、一緒に歌ったことだけ。
うちは小さい頃から食堂や惣菜屋をやっていたので、
母は私が目覚めた時も夜寝る前も、いつも食堂の厨房で常に働いていた。
父は配達ぐらいしか働いている姿を見たことはなく、
母に「配達あるからお父さん呼んできてー!」と言われて探しに行くのは
近所のパチンコ屋だったり、スマートボール場(古いな)のような遊戯場だという、
典型的なドラ息子オヤジだった訳で。
おそらくああして散歩していた時も家では母が必死で働いていたんだろうなぁ。
そんなこんなを思い出しながら、『朧月夜』の入ったカセットテープを架ける。

明日は施設の明け渡しだ。
今日は残りの荷物をステーションワゴン君に積み込んで帰ろう。
ダーリンは漁の網外しのお手伝いに行くので明日は路線バスでまた来ることにしよう。
「今日はもう帰るけど、明日も来るね~」と声をかけて、老健をあとにした。
施設の荷物を積み込んでの帰り道は、すでに真っ暗だった。
いつも帰り道は暗く、吹雪いている。
朧月夜なんて、抒情的な世界ではないなぁ。


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