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物置に棲みついた動物 [厚田の野生生物]

このブログは基本的に時系列で記事をUPしているが、
3/2に『色々蠢いている』という現在進行形の記事を挟みこんだことがある。
厚田の野生生物:64歳 空気・呑気な移住日記: (ss-blog.jp)
今回は、その始まりと後日譚だ。


ダーリンが浜にお手伝いに行ってから、時々たくさん魚を貰って帰ってきた。
それを干物にすべく、車庫兼物置に吊るしていた。
干物が少しずつ減りだし、物置周りにキツネと思われる足跡があったので、
ずっとキツネだと思っていた。
ホッケやハタハタの干物がすべて無くなり、
ニシンのお手伝いが始まってからは「今度は身欠きニシンを作る」、と
干す場所を工夫して再度張り切って挑戦し始めた頃だった。
物置に入ると、姿は見えないが唸り声で威嚇された、と言うようになった。
作業の時にずっとシャッターを開けていた日もあったため、
「もしかしてその時に入って閉じ込められたのか?」と思い、
二人でシャッターを小さく開けて、周囲の壁を叩いて追い出し作戦をしたりもした。
が、依然物置では唸り声やガサガサ動く気配がしていた。
その後もステーションワゴン君のボンネットにフンをされたり、
ニシンもすべて消えたりして、出入りというより棲みついてしまったようだ。
もう、どこに干しても ただの餌場になるだけと知り、物置での干物は諦めた。

「どうしよう? 冬越しして繁殖でもされたら?」と嫌な想像が膨らむ。
ダーリンは「私、ここで産む!」って決めてるような気がする、と言う。
何が棲みついているのかわからないまま膠着状態は続いた。
2/19、ボンネットに付いた足跡から、アライグマと判断した。
アライグマは木登りも得意なので、どこに干そうが同じ事だったんだ、と納得。
煙が嫌いらしいので、屋外用の虫除け線香を焚きしめてみたが、効果なし。
まぁ、物置にはおそらくキツネが穴を掘って入れるような入口も作っていただろうし、
屋根の隙間や歪んで三角に隙間が開いている窓からだって入れるかもしれないしね。
煙も だだ漏れで充満しなかったと思われる。
それからも、ほぼ決まった所にフンをする、という「毎日のお便り」が続いた。

2/24に顔役さんの奥様が通りかかり、相談したところ、
午後にはすぐ箱罠と、「これ付けとくといいわよ」と魚肉ソーセージを持っていらした。
エサの付け方を教えてもらい、奥様と二人で恐る恐る物置のシャッターを開けると、
薪づくりのためにゴタゴタと積んである丸太の向こうに隠れる、
縞々尻尾のお尻を目撃!
間違いない! 棲んでいるのはアライグマだ!
アライグマは なかなか獰猛だと聞いていたので、
二人で「怖い、怖い」と言いながら、手近な場所に箱罠を置いたのだった。

翌日。そっと物置を覗くと、魚肉ソーセージは無くなっていたが、
箱罠のふたは開いたまま。
??? エサだけ取られる、ってこともあるのか?
顔役さんの奥様は「すぐにはかからないかもしれないから暫くそのままで」、
山のプロさんは「ニシンの頭でも下げとけばすぐ捕まるべよ」との助言から、
もらってきたニシンを箱罠に入れ、様子を見ることにした。

そこから一週間。
「毎日のお便り」は、ぷっつりと途絶えた。
居なくなったのかどうかはわからない。唸り声は、私はまだ聞いたことがない。
ニシンはこの気温の中、カチカチの冷凍状態で箱罠に入ったままだった。

3/2。今日も恐る恐る物置を覗く。
ぎょえ~~~。箱罠のフタが閉まっている。
壁側に向かって置いてあるので、暗くて中は良く見えないが、
そっと覗くと、箱罠の中の小さな眼も、こちらを覗いていた。
ああ~。かかっちゃたんだ。どうしよう。
かかったからには、生殺与奪は私たちの手に委ねられてしまったのだ。
しかも今日は土曜日。役所に相談しようにも、今日・明日は動けない。
帰宅したダーリンに報告した。
夏の終わり、『夜の峠で自転車ツーリングのおじいちゃんを拾った事件』の時に見た、
獲物を咥えて道道を渡っていたアライグマの姿を思い出す。
ヘッドライトに照らされて、一瞬威嚇ポーズを取ってから走り去った、獰猛そうな姿。
はっきりと見えた、縞々尻尾。
アライグマは外来生物なので、私達素人が勝手に逃がしても死なせてもいけない。
野生生物の命、という重い現実に、二人して どんよりしたのだった。
もう二度と、こんなことにならないように、
お互いの生活圏で棲み分けできるようにしなきゃね。
念のため、顔役さんちに「かかっちゃいました」と アドバイスを求めに行った。
月曜に引き取りに来てくれるよう、その部署と繋がっているご家族から
担当部署に連絡しておいてくれるそうだ。

翌 日曜日も、物置の箱罠のことが気になって仕方がなかった。
「寒いかなぁ。何かに潜ってるのと違って、箱罠だと外気に晒されてるよね」
「相手は野生生物ですからっ。元々この寒い中で暮らしてるのっ」と諭される。
とかいいつつ、ダーリンは、残っていた魚肉ソーセージの欠片を持って物置に行った。
「最後の晩餐に、ソーセージ、やってきた」ですと。

3/4、月曜の朝。発足にしては強めの風の、吹雪だった。
物置前に箱罠を出しておけば、立ち会わなくても引き取っていってくれるとのこと。
物置の隅に設置した箱罠を持ち上げて外に出す。
4~5kg位なのだろうか。箱罠だけの時より少し重いだけだが、
そっと持ち上げていても揺れるのか、中でキョロキョロしている位の重心の変化を感じて、
静かに移動するのが大変だった。
吹雪の中、引き取りが来るまではさぞ寒かろう。
いやいや、その後に待っているのは寒さどころの騒ぎじゃないか。
駆除、だよね・・・。
明るい所で初めて中の動物をまじまじと見る。

ん? これ、アライグマ?
尻尾を巻いているのか、縞々尻尾は確認できない。
顔も、額の真ん中に黒い筋が入っているはずだし、耳の縁は白いはずだが?
獰猛さも感じない。覗き込むといちおう威嚇してくるが、
小さい「ウウ~」という声で迫力がないし、下から覗く眼が、いかにも気が小さそう。

「君、タヌキじゃないの?」

いや、でも私は確かに見た。物置で、縞々の尻尾を。
ボンネットにペタペタ付けられた、赤ちゃんの手形のようなアライグマの足跡を。
自信がないので、判断は専門家にお願いしよう。

見慣れない車が通り過ぎ、ほどなくして帰って行った。
役所の担当者さんが来たのかと様子を見に行くと、空の箱罠だけが残っていた。
ドナドナされていったのね・・・。


翌日、顔役さんの奥様が、
「タヌキだったんだって。外来生物じゃないから逃がしてやったって」と
『タヌキとアライグマの見分け方』のプリントを持って、知らせに来てくれた。
やっぱり! 
なんてこった! 魅惑のタヌキを、捕えてしまったんだ!!
物置周りを確認すると、キツネとは違うと思われる足跡が残っていた。
ここから裏の裾野に逃がしてやったのかぁ。
何はともあれ、アライグマも、タヌキも、殺さずに済んでホッとした。


それにしても、そんなに取っ換え引っ換え野生動物が出入りしてんのか、
うちの物置・・・。



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