SSブログ

発足は穏やかで美しい [厚田の風景]

翌日も発足の雪はしんしんと降り続けた。
二日目の朝も降り止まないので、起き抜けと昼前、2回雪かきをした。
1月下旬の、空の底が抜けたような豪雪はその後なく、
淡々と、静かに雪嵩を増していく。
気が付けば、また屋根からの落雪が突っかえている。
午後になって時々晴れ間が覗くようになってきた。雪も一段落かな。

お気に入りの箱かんじき(ただの野菜ケース)を携えて、
今度は背丈ほど積もった雪壁を乗り越え、突っかえた屋根雪を崩しに出る。
ガリガリに固くなる前に崩すのは、軽くてサクサク進むのが何とも楽しい。
ついでに、じりじりと狭くなってきた駐車場を少し拡張しよう。
手を休めて見上げると、冬の空でもこんなに青いんだ、とちょっとビックリする。
遠くに雪を降らせたそうな雲が居るけれど、今はとても穏やか。
降りたての雪を被った山が、空の青に映えて、いつもより更にキレイだ。
ああ、本当にキレイ。なんて美しいんだろう。
夏の間は生い茂った木々や、わっさりした笹薮で視界が遮られていたが、
雪でなだらかに覆われた土手の輪郭がふんわり柔らかい。
結局は背丈ほど積もっているので視界は夏と大差ないのかもしれないけど、
夏には見えなかった建物が見えたりもする。
あの山の白い筋、木がないけれど沢筋かしら。それとも林道のような道かしら。
雪が完全に融ける前に、入って探検してみたいなぁ。


道路端を雪かきしていると、ご近所さんの車も通りかかる。
乗っている車種がわかる見知ったご近所さんだけでなく、
直接顔を合わせたことのない方々の顔も、近くだと確認できる。
車が通りかかる時 雪かきの手を止めて会釈すると、
車窓の方々もニコニコして会釈してくれている。
ああ、笑って挨拶してくれるって、しみじみ嬉しいなぁ。
発足は、風景も人も、穏やかで美しい。


nice!(0)  コメント(2) 

地元でホワイトアウト [厚田民としての生活]

「入院案内郵送してほしい。ポストあるでしょ?」と連絡が入る。
ポスト、厚田まで出ればあるけど・・・
ダーリンが浜にお手伝いに行ってるから車がない。
退院してから、救急病院で借りた松葉杖の返却証が無いとか、色々不便もあるようだ。
姉が残していた書面やレシートには一切触っていないので、
テーブルに積んであるものを探してほしいこと、
郵送は明日になるので待ってほしいことを伝えて電話を切る。

厚田の天気は荒れていた。
相変わらず雪は わしわし降って来るし、
ダーリンの話だと浜はしょっちゅう吹雪いているそうだ。
退院の時は触れないようにしていたが、
ひどい言葉を浴びせてから姉とその話はしていなかった。
どうしても気持ちの整理がつかないので、手紙を書いて同封した。
一度、きちんと嫌なものは嫌だと伝えておきたかった。
そして、それはそれとして姉を大好きだし、愛している、と。


翌日、ダーリンが戻ってから、ひとりで厚田市街地に向かう。
発足は穏やかな雪だったが、浜に近づくにつれ風が強くなり、
積もった雪も巻き上げての吹雪になった。
走り慣れた道とはいえ、くねくねと曲がる山と川に挟まれた道。
路肩が良く見えないまま、ドキドキ運転しながら なんとか厚田に着く。
郵便局がある場所は浜により近いので、吹雪もすさまじい。
こんな中、局員さんが吹き溜まった駐車場の除雪をしていた。
車を下りると、息もできないほどの突風。
これじゃ、掻いても掻いても吹き溜まるんだろうなぁ。
会釈して、そそくさとポストに投函する。
国道を横切るだけでも視界が悪く、命からがら発足に逃げ帰る。

帰宅して1時間ほどしてから、はっと気が付く。
「郵便局で切手を買って、貼ってから投函しようとしていたんだった!」
『迂闊さん』は、またもや吹雪に気を取られて大事なことを忘れてしまっていた。
慌てて郵便局に電話をかけると、
「切手を貼っていない郵便物があったので、集荷せずに取り置いてあります」との事。
ありがたい!
吹雪の中、慌ててまた厚田へ向かう。
一体何をしに厚田まで出たんだ。まるで吹雪体験アトラクションしてきただけじゃないか。
とほほ、と思いながら車を走らせていると、
一気にぶわ~っとホワイトアウトした。
ぎゃー、何も見えない。路肩はどこだ。
ハザードを点けて超のろのろ運転をしながら、
「どうか前からも後ろからも車が来ませんように」と祈りながら進む。
時折何度かふっと視界が開けて、「あ、この辺りまで来てるんだ」と確認しつつ、
なんとか郵便局に辿り着いた。
「いや~、大変失礼しました。取り置いていただいてありがとうございます」と
用事を済ませ、ドキドキしながらまた発足に戻る。
帰り道は、吹雪いてはいてもホワイトアウトするほどではなく、助かった。

いやはや。厚田に出るだけで命の危険を感じるとは。
手強いぜ、冬の厚田。


nice!(0)  コメント(0) 

姉の退院

気持ちの整理がつかず2日間は姉に連絡しなかったが、
3日目、札幌に所用があり、ダーリンも一緒に行けるので車で札幌に向かう。
月をまたいで入院すると、翌月分の医療費もかかるため、
なんとか1月中に退院したい、と姉は言っていた。
支払額がわかる「入院案内」書面を私が持ち帰ってしまったため、
手持ちの金額で支払えるか不安がっていた。
書面と、追加の消耗品を持って病院に行くが、リハビリ中で会えなかった。
姉に会えると思っていたのに看護師さんが現れて、
想定外で慌ててしまい、肝心の書面を渡し忘れたことは厚田に戻ってから気付く。
帰り道、携帯キャリアのショップがあったので、
事情を話し、入院している本人の代わりに契約ができるか聞いてみたが、
本人でないと契約できないそうだ。
しかも、おうちWi-Fiのルーターがあっても、キャンペーン適用外で月額料金が高そうだ。
そういえば、父の時は私名義で契約したから私が動いても済んだんだった。
郵便局にも転送届を貰いに行ったが、同居していないと家族でも委任状が必要とか。
あ~、面倒くさい。
本人が動けないから家族が手続きしようっていうのに、何かと面倒な世の中だ。

なんとか1月末日付で退院できることになったとメールが来る。
当日迎えに行って、姉の体調が大丈夫そうなら、
キャリアのショップや郵便局をまわってあげたいし、
できれば車がある時に救急病院で借りた松葉杖も返しに行きたい。
この雪道では簡単に外出もできないので、当面の買物もさせてあげたい。
姉は「長い時間車に乗って足を下げていると痛いので、買物以外は後日でいい」、
「大きなショッピングセンターを歩くのは自信がない」と言う。
骨折経験者として、小さな店を松葉杖で移動するより、
車イスを借りられる大型ショッピングセンターの方が絶対楽だから!と説得。


さて、当日。
札幌の朝は、道路事情もあいまって、渋滞していた。
病院の駐車場も満車だった。
退院前の診断もあるらしく、何時にすべての手続きが終わって出てくるか未定のため、
先に姉の家のゴミ出しをし、病院隣接店舗の駐車場にいったん入って、
「病院の駐車場は満車で入れないので近くの店の駐車場に居る」とメールする。
「何時になるかわからないから私の家で待機していて」と返事が来るが、
駐車できないので病院の近くで待機すべく、
駐車場のあるファストフード店で待つことにした。
席に着く前に、「どこにいるの? 今会計しているからすぐ来て」。
この雪道で駐車場探しながらそんなに簡単にワープできんよ、焦るな、と返信する。
とるものもとりあえず、すぐ店を出て病院の入口でダーリンに車をつけてもらって
院内に迎えに行く。まだ会計待ちをしていた。せっかちだなぁ。

とりあえず、会計も無事に済み、晴れて姉は退院となった。
大型スーパーで車いすを借りて、あれやこれやと買い物をする。
ダーリンに車いすを押して貰いながらワイワイ買い出しをするのは楽しい。
これでやっと姉の札幌生活が始まるのだ。
骨折というアクシデントはあったものの、
逆に考えれば何かとアクティブに動き回る姉が、苦手な雪道を動き回らないような
行動抑止になっていると思えば、無理をしないでくれて良かったのかもしれない。
なんやかんや名古屋と札幌を往復して、気苦労してきた数か月なのだ。
カラダ自身が、「ちょっとスピードダウンしてよ」と訴えているような気がした。
快気祝に都心部でご飯が食べたい、と姉が希望したが、
道路状況や渋滞を考えると・・・申し訳ないが、近隣で昼食にしてもらう。
「何度も来てもらってありがとう」と昼食代や交通費をゴチになる。
出費が多い所申し訳なかったが、現金の乏しい田舎暮らし、有難くいただいた。


まだ雪道でゴミ出しも大変な状況なので、一部厚田でゴミ出しをしてほしいと頼まれ、
少しゴミを持ち帰り、帰路についた。
もう抜糸も済ませ、家で普通にシャワーを浴びてもいいそうだ。
1週間でここまで回復するなんてすごいなぁ。
私の時なんて、まだ管がいっぱい繋がっていた時期だよなぁ。
退院しても患部を濡らさないようにビニール袋で密閉して
変な恰好でシャワー浴びてたっけなぁ。
10年違うと、治療方法や医療方針の違いがあるのかな。
何にしろ、大難が小難で済んだようで良かった。

あ、また入院案内の書面を渡し忘れちゃった・・・。


nice!(0)  コメント(0)