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厚田の冬を思い知る Part3 [移住に至る道・序章]

さらに2週間後。
卵を買った帰りに石狩の「番屋の湯」という温泉に行く。
すでに吹雪いていたが、まぁ、石狩の冬はいつもこれくらいは吹雪くよね、と言う位の
状況だったので、せっかくここまで来たなら温泉に入って行こうとなったのだ。

さて、温まって帰ろうとしたら、外はとんでもなく吹雪いていた。
波のように何度も突風が吹きつけ、雪がバチバチ当たって、砂粒かと思うほど痛い。
駐車場の車たちは皆、吹き付けた雪で真っ白。
突風の度に息が詰まり、車に辿り着くだけでも大変なほどの状態だった。

番屋の湯は長大な石狩川の河口にある。
河口は海に直角に流れ込むのではなく、いったん海岸線と並行してから流れ込むため、
砂州となったこの地区は海・河口・石狩川最下流と三方を水に囲まれている。
常に海風が強く吹き荒れる地区なのだ。
いつもは石狩川沿いの通行量の少ない道を帰るのだが、
安全を考えて今日は国道から帰ろう。

ところが。
国道に出るまでの道がすでに凄い状態。猛吹雪+地吹雪。
ハザードランプを点けつつ走った前回の状態すら超える視界の悪さ。
国道に合流する信号まで1km位の距離なのに、どこを走っているかわからない。
前を走る車のハザードランプだけが頼り。
すると、前の車が停まった。
国道合流地点の信号に差しかかったのか、とも思ったが一向に動かない。
10分位停まっていただろうか。
数年前に地吹雪で動けなくなり車の中で凍死した人が続出したニュースが頭をよぎる。
ダーリン、吹雪をものともせず、「前の様子を見てくる」と外へ出て行った。

数分して、戻りかけたダーリンに前の車の人が話しかけている。
そして、戻ったダーリンによると、
数台前の車が道を見失って吹き溜まりに突っ込んで道を塞ぎ、先詰まりしているとのこと。
状況を把握した前の車は、道幅が不明な状況でなんとかUターンし、もと来た道を帰ってゆく。
私たちも番屋の湯の近くまで戻って、別の道から国道に合流した。


合流したとて状況は変わらなかった。
道路幅が広い分、むしろ地吹雪がひどく、
信号すら真下近くまで来てやっと「信号だ!赤だ!」と気付くほどの視界。
のろのろと低速で走っているのに、ここまで視界が悪いと後続車に追突されかねない。
てか、後続車が居るのかどうかもわからない。
吹雪の中、ここを走っているのは私達の車だけなんじゃないか、と錯覚する孤立感。
「駄目だ、どこかに避難しよう」と近くにあるサーモンファクトリーを目指す。
が、駐車場の入口もわからず、通り過ぎた建物の霞んだシルエットを見て
「ああっ、今の建物だった!」と避難かなわず。
ただただゆっくり前に進むしかない恐怖。
山の中の「真綿にくるまれて夢みるように迎えたかも」、という死の恐怖。
視界が悪く道路パトロール車しか往来しない状況で「遭難するかも」、という死の恐怖。
そして3度目の死の恐怖は、何も見えないままの国道で
「対向車や前後の車と突然ぶつかるかも」、というまた別の恐怖。
私たちが移住を夢見る土地はこんなにも厳しい土地なのだ。
やはり、「それでも移住する覚悟はあるか?」と問われている気がした。


そこに、突然除雪車が現れた。
除雪作業中ではなく、どこかに移動するために普通に走行している。
除雪車のライトは乗用車とは違ってとても明るく、急に道路の様子が見えた!
ああ! 地獄に降りてきた蜘蛛の糸! 路肩がわかる~!
二人で「ありがとう、除雪車!」「すげー!除雪車!」と叫びながら必死で付いていく。
なんか、除雪車がいてくれるだけで、すごい安心感と高揚感が!

なのに、少し距離が開いたところで信号にひっかかり、黄信号で突っ切った除雪車は
無情にも私たちを置いて走り去ってしまった!
車内には「置いて行かないでー!!!」という私たちの叫びが響く。
く、蜘蛛の糸が~~~!
私は気が付いたら涙が出ていた。
除雪車が去った国道は、元通りの先が見えず暗い孤立感に包まれる。
その後の私たちは必死で路肩を探り、札幌への分岐点を探して極度の緊張の中進んでいった。
無事、札幌への分岐点をクリアし、進んでいくと・・・
徐々に視界が開けていき、普通の雪がちらちら降っているだけで、
札幌への道は何事も無かったかのように舗装面が出ていた。
今までの天気は何だったんだ・・・。

厚田へ行くだけで、連続3回も味わった死の恐怖。
充分体験できました。覚悟しましたよ、天気の神様。


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