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父からの電話 [父の介護]

姉が厚田滞在中も何度か父から電話が入った。
あいかわらず何を話しているのか聞き取れない。
「何か足りないの?」「TVカード、もう無いのかい?」
とか色々聞いてみるが、YESかNOかもよくわからない。
そのうち、諦めたのか癇癪をおこしたのか、電話は切れる。
私では通じないと思ったか姉にもかかるが、やはり同じで、最後はブツッと切れる。
「コロナで面会禁止だから、解けたら会いにいくからね」としか言えない。

その間も銀行振込や施設の片づけなどで札幌通いは続く。
姉は3日滞在した後、札幌に宿泊して物件探しや施設片づけに奔走している。
次の入居者さんが使えそうな家財は施設に譲るなど相談し、
父の一番のこだわり、大型TVは施設に譲って、かかわりのあった人たちが
楽しんでくれたら父も嬉しいかねぇ、なんて話しながら三人で片づける。
それにしても、この施設に転居する前の実家片づけでは随分荷物を少なくした筈だが、
たった一年半で洋服も靴も、こまごまとした雑貨類も、こんなに増えるものなのか。
押入れもパンパン、キッチンもベッド周りもゴチャゴチャだ。
1DKのコンパクトな住まいの中で、老健に持ち込めるトランク1個分の衣類と
段ボール1個分の雑貨程度しか、今後の父の生活には必要ないものになってしまった。
実家片づけは2度目と言えるが、今回の片づけは
回復の希望がない片づけなのが、なんともやるせない。

分別したゴミは施設にゴミ出しをお願いし、
レンタルしている介護用品の撤収の手配をしたら、
あとは姉の札幌住まい用の荷物と、老健に持ち込む荷物だけになるだろう。
処分場に持ち込むゴミはうちのステーションワゴン君に積み込めば、
なんとか片付きそうだ。


そんなこんなで、姉の札幌住まい用の荷物と処分場に持ち込むゴミを満載して
姉の厚田滞在第二弾のため3人で厚田に帰る途中のことだった。
札幌市内は穏やかだったが、やはり石狩川を渡った頃から天気が変わってきた。
望来の海岸沿いから吹雪になった。
ヘッドライトが当たるとかえって視界が遮られるほど、
こちらに向かって襲いかかるような雪。
いつもなら眩しくて一瞬目つぶしを喰らうような対向車のヘッドライトが、
むしろ見通しを確保してくれてありがたい。このタイプの吹雪は初めてかも。
厳しい海岸沿いの吹雪に晒されながらなんとか厚田に辿り着くと、
結構な積雪になっていた。
山に向けて進むほどに風は穏やかになってフワフワの雪道になり、
あと10分ほどでおうちに着こうかという時に、電話が鳴った。
父からだった。

「助けてくれ! いますぐ迎えに来てくれ!」
あんなに聞き取れない喋り方だったのに、はっきりと。


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