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本人同席での医師説明 [父の介護]

父の病室でコロナ陽性者が出たという。
最初は一人だけだったが、日を追うにつれ、二人目、三人目と陽性に転じていき、
今や父だけが陰性のため、逆隔離で一人部屋に移ったらしい。

先週の医師面談で「一週間、嚥下リハビリの効果や肺炎の回復状況を見て、
今後の対応をご家族と相談しましょう」という話になっていたが、
今日はその面談の日だ。
姉には電話のスピーカー機能を使って一緒に説明を聞いてもらい、
本人同席のもと、現状を理解した上で意思確認をするのだ。


面談の前に父に面会した。
今回はベッドでなく、車いすで現れた。血色も良く、明らかに入院時より元気だ。
リハビリのおかげで、なんと、つたい歩きもできるようになり、
トイレくらいなら付き添いがあれば歩いて行ける時もあるのだという。
「その時」を覚悟したけれど、まだまだ大丈夫かもしれない、と希望を持った。
口は入歯が入っていないこともあり、言葉が明瞭ではないが、
頭はしっかりしており、あいかわらず
「あれを持ってこい、これを持ってこい」と要求は激しい。
父は、退院したら高齢者住宅に戻って、ああしたい、こうしたい、と言う。
現状ではもう戻れないんだよ、と話す。
以前の状態に戻らない限り、自立が前提の高齢者住宅では受け入れができないため、
今はお向かいのクリニックに併設した老健に移動することを考えているんだ、と。

「ここが終の棲家だと言っていたじゃないか。俺は何としても帰りたい」
わかるよ。私達だってそのつもりだった。父が静かに機能が衰えていくなら
そのまま高齢者住宅で看取りができるはずだったのだ。
救急搬送する事態になってケアの範囲が大幅に変更になった今となっては無理なんだ。


父が納得しないまま、医師が現れて面談が始まった。
姉とも電話を繋いで皆で医師の説明を聞く。
「嚥下のリハビリも行って、機能の回復状況を見ましたが、回復の見込みがありません」
顔色も良く、元気につたい歩きもできるようになった父に抱いた希望は、
ひとことで打ち砕かれた。


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