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道道を血に染める [厚田民生活 二巡目]

今日からダーリンの3連休。
ダーリンは子猫たちに起こされて、夜明け前から猫ごはんを作っていた。
イチゴ収穫のお手伝いに出かける前に食べられるように、蕎麦も作ってくれた。
午後からは雨の予報だが、私のお手伝いが終わるのが昼頃になると思うので、
帰ってから雨模様の中で行くか、明日にするか、仕入れの札幌行はどうしようかねぇ。
そんな話をしながら、ダーリンと、抱っこされた子猫たちに見送られて、
意気揚々と自転車を走らせた。

走り出してすぐ、帽子の顎紐を締めていない、と気がついたが、
ちょうどトンビが様子を見るように上空を飛んでいたので、
「トンビの馬子かなぁ、おはよう~」なんて声をかけていた。
最近、馬子の嘶きを聴いていない。普通のトンビの鳴き声しか聴かないのだ。
縄張りを変えたのかなぁ。
声変わりして、普通に鳴けるようになってたりして、なんて笑う。
イチゴ農家さんの手前の下り坂で、帽子が飛びそうになった。
しまった、下り坂なのに減速せずに走ってきてしまった。
帽子を押さえようと片手運転になった瞬間、ぐらっとバランスを崩した。
関節炎で握力がぐんと落ちてから、片手運転がめちゃめちゃヘタになっている私。
まずい、まずい!
ブレーキを握りながら必死にバランスをとろうとしたが、思ったよりスピードが出ている。
回転を止める前の独楽のように、バタバタ左右に暴れながら進む自転車の、
ハンドルを握ったままサドルから腰が落ちた。
あっ、落ちる!と思った瞬間、
そのまま左回転で自転車を巻き込むように、道路にズサーッと落下した。
転倒する時もきっと、独楽のように回転しながら倒れたんだろうと思う。


一瞬、気を失ったかもしれない。
気を失う途中、目の前が真っ暗になりながら衝撃があって、後頭部を打ったのは自覚していた。
眼を開けると空が見えていた。
両ハンドルを握りしめたまま、自転車の下に倒れ込んでいたようだ。
痛いんだか、重いんだか、なんだかわからないが、すぐには動けなかった。
あ、自転車が上にあるからだ、と気が付いて、くぐり抜けるようにズリズリ脱出した。
仰向けから腹這いに戻ってみると、道路にはけっこうな量の血が流れており、
少し離れた所に小さな血だまりもできていた。
自分でも、ひえ~と引きながらなんとか立ち上がると、
すでに帽子も、ヤッケも、腕カバーも血だらけだった。

ああ、どうしよう。今日は一週間で一番忙しい曜日なのに、
こんなに血だらけだと仕事にならない。休まなきゃならない。大迷惑だ。
てか、転んだだけでこんなに血だらけになるなんて、何が起こったんだ?
後頭部を打ったのは間違いないので、きっと切れているんだろう。
頭って、ちょっとの傷でもすごく出血するしなぁ・・・。

そんなこんなを考えながら、よろよろ自転車を押して農家さんの敷地に辿り着く。
イチゴのハウスを見ると、まだ誰もいない。
そうだ、今日は朝ごはんを早く食べられたから余裕を持って出てきたんだった。
とにかく、状況を伝えなきゃ・・・と、ふらふら農家さんのおうちに向かう。

そのタイミングで丁度イチゴ農家さんがおうちから出てきてくれた。
血だらけの私を見て、「どうしたの!?」と驚く。
「そこの下り坂でコケちゃって・・・」
「待って。すぐ家に送る。おーい、かあちゃーん!大変だー!怪我してるー!」

月曜の早朝は札幌までのバスが無く、石狩市街までご家族の送迎がある日なので、
イチゴ収穫が始まる前から大忙しの日なのに・・・。
その後もイチゴ共撰の選果があるので収穫だって大急ぎでしなきゃいけない日なのに。
「ご迷惑かけてすみません」とシュンとしながら、
自転車ごと軽トラで、おうちに送っていただく。
「旦那さん、おうちに居るの?」
「はい、今日は休みで」
「良かった、じゃ、申し訳ないけど戻るね。仕事は気にしないで病院行ってね」と
事情をダーリンに伝え、自転車を下ろして急ぎ去って行った。
うわぁ~~~! こんな忙しい日に、本当にごめんなさい~~~!
しかも、直後に「道路に落ちてた」とメガネも届けてくださって、二度も往復させちゃった。


イチゴ農家さんから私を引き取ったダーリンも驚いている。
「何があったの!?」
自爆事故の詳細を話しながら おうちに入って、血だらけのヤッケを脱ぐ。
家の中にもポチポチと血の点が・・・。
ああ~・・・結構出血してるんだぁ・・・。
この分じゃ、イチゴ農家さんの軽トラのシートも汚しちゃってるんだろうなぁ・・・。
触る所に いちいち血の跡が付く。ああ、ぬぐっても汚れを拡げてるだけかぁ・・・。
洗面ボウルに水を張りながらヤッケを浸けると、ばぁ~っと真っ赤になる。
うわぁ・・・こんなにたくさんの水で薄めても、血って濃くてキレイな真っ赤なんだなぁ・・・。
なんか他人事のように、ふわふわと目の前の事象を観察していたら、
「病院、行かないと」と慌てるダーリンの声に
「あ、そうだなぁ」と ゆっくりぼんやり現実に還ったのだった。


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